前編の記事ではピクシブのコミュニティマネージャー皆さんの「全てのユーザーを幸せにしたい」という共通の想いと、そのために自分たちがどのように行動されているのかをお話しして頂きました。
後編の記事では、前編でお話をして頂いた社内コミュニケーションとは違い、エンジニアと相互理解を深めるためのコミュニケーション術はとても興味深いものでした。エンジニアと対等に話ができる場を自ら作っていくことで、「全てのユーザーに幸せ」と感じてもらえる環境を提供していけるのではないかと思います。前編をまだ見ていない方は、ぜひ前編と合わせてご覧ください。
2014年 pixivのCSとして中途入社。
その後、関連サービスのBOOTH、pixivFACTORYのCSを担当しつつ、お問い合わせ件数の減少や業務を効率よく行うためにプログラミングを学び、反映させている。
現在はpixiv Sketchやpixiv Sketch LIVE、PawooのCS・運営を担当。
参考:https://www.wantedly.com/projects/88806/staffings/388758
2016年 ピクシブに入社。
「pixivFACTORY」のコミュニティマネージャーとして、お問い合わせ対応や印刷所との提携作業の他にも、オペレーション改善のためにエンジニアと開発に向けた取り組みを行う。
ピクシブ株式会社 コミュニティマネージャー 渡部丹生
2016年 ピクシブに入社。
「BOOTH」のコミュニティマネージャーとして、お問い合わせ対応やサービス改善、運営業務の他にも、倉庫サービスでの商品の入出荷管理や問題改善などの取り組みも行う。
エンジニアと相互理解を深めるコミュニケーション術
大塚
サービス全体を改善しているから売上が上がっているという事は、経営陣の方へ伝えるのも難しいと思います。その辺の伝え方に工夫していることなどはありますか?
渡部
3ヶ月に一度は必ず面談をしているので、上長からのフィードバックや今後どのようなことをしていくのかなど、そういう場で思いを伝えています。あとは評価シートがあるので、自分たちが今期やったことを伝える時に「今期はこういうことをしたから売上がアップした」という事はアピールしています。
大塚
ユーザーの引っかかっていることを理解して、先ほどお話をして頂いたように入荷を早くしてあげる。その結果として売上が上がったなど、サイクルも早く検証もできそうですよね。
もし宜しければ御社のCSの特徴などがあれば教えて頂けますでしょうか。
塩坪
軽い実装だったらCSが自分でやるというのはあります。実装まで自分で手を動かさない場合でも、GitHubのIssueに書いて、そのIssueを基にエンジニアが入って来たり、ディレクターが入って来たり、デザイナーが入って来ます。
そこで議論が行われて、実際に実装に落としていくというのはよくやっています。
藤本
そういうのがあると、エンジニアと話すときにスムーズですね。「GitHubやプログラミングは良く分かりません、だから全部お願いします」となると頼まれる方も大変だし、時間もかかりそうな気がします。
渡部
プログラミングをやることでエンジニアと会話が通じるようになってきたのは、かなり大きいかなと思います。プログラミングを理解することで、コミュニケーションが取れるようになったのかなと思いますね。
藤本
相手のことが分からないまま、要望だけ伝えても相互コミュニケーションにならないですよね。
CSがエンジニアにレビュー依頼!?その理由とは
大塚
実装することでエンジニアの方とコミュニケーションが取れるようになって、どのような効果がありましたか。
丸山
私の元々の性格もありますが、頭に浮かんだやりたいことを、上手く言葉にして伝えることが苦手だったんですね。そのための強行突破ではないですけど、プログラミングの知識を得たうえで、フロントの部分を自分で書いてしまって、あとはデプロイしていいかどうかの確認のみを投げる、ということはたまにあります。
藤本
「こうした方が良いですか?」という提案ではなくて、レビューを依頼しているような状態ですか?(笑)
丸山
そうですね(笑)。本当にダメならやらないし、最終的にはPMの承認も必要ですが、細かいやりとりは時間をムダにすることもあります。
それだけに時間を割いて仕事をしている訳ではないので、やれるところまで自分でやってしまう。そこからエンジニアやデザイナーにアイディアをもらうことで、当初やりたかった形とは違うかもしれないけれど、ユーザー寄りになっていく。
結果ムダなコストが減ったなと思いますし、エンジニアとの会話ができるようになると、意思の疎通をし易くなります。
ずいぶん前ですが、エンジニアに「どうせ言っても分からないと思って会話をしているんだ」と言われたことがあって、凄く落ち込みました。でも、「やっぱりそうだよな、実際わからないし….。」と思い、それならエンジニアと対等に議論できるくらい知識を得た方が良いと思いました。今では意見を伝えた上で議論できるくらいにはなれたかな……と思います。
渡部
前の会社の方とお会いすると、ピクシブに入ってから気が強くなったと言われます(笑)。
一同
(笑)
渡部
エンジニアと対等に会話をするというのはパワーが必要なんです。
「ユーザーにとって良いサービスにしたい」
それはお互いに同じ気持ちなので、対等に話そうという意味では葛藤もありますし、譲れない部分もでてきてしまうんですよね。その反面、エンジニアから別の案が提示されたときは「こういう考え方もあるんだな」と気付かされますし、非常に勉強にもなります。
ユーザーのためにCSがチームのバランスを考える
大塚
弊社でも全く同じ状況はありますが、CSメンバーが「これどういう事だろう?…でも、もう聞けない」という状況になっていて、結局お客様に曖昧な回答をせざるを得ない。
でも、そこでもう一度「どういうことなの?」と言えるという事は素晴らしいことですよね。
丸山
言っている用語が分からない時に「そのままをユーザーに伝えられないから、もうちょっと分かりやすく教えて」「ちょっと今の言葉難しすぎるから、中学生でもわかる言葉で教えて!」というのはたまに言ってしまいます(笑)。
藤本
ある種フラットだからこそ言い合えるというか、CSがどうしても下の方に見られてしまい「バグも仕様と言え」ということを言われることすらあります。
塩坪
弊社では「BOOTH」でも「pixivFACTORY」でも「pixiv Sketch」でも、ランチ中などに「これは、こうした方が良いんじゃない?」という話が結構あるんです。そういう話が出たら、取り合えずIssueを作っておく。
内容が固まっていなくても、要らなければ後で閉じれば良い話なので忘れないように出しておいています。
大塚
CSの方はユーザーに真剣に向き合っていて、その想いを汲み取って実現したいと思っていますよね。ただ、そこには社内に理解をしてもらう必要があり、社内を動かす必要が当然あって、そこが壁になっていることがあると思います。
ピクシブさんの場合は、壁を無くすために皆さんが努力してプログラミングを覚えて、社内の方とコミュニケーションを取れるようになり、ユーザーにより良い価値が提供できるようになっている。
皆さんがユーザーに向き合うために、ハードルを自分たちで壊しにいっているのだなと感じました。
塩坪
社内の人は何を言っても社員だから良いですが、ユーザーはそこでお終いですよね。だから絶対にユーザーを優先したいですし、社内は険悪になっても、その後に修復をすることができます。
CS自らが売上を生み出していきたい
大塚
ありがとうございます。最後にコミュニティやCSについての今後について教えて頂けますでしょうか。
塩坪
私は、今年2月に「pixiv Sketch」のチームにやってきたのですが、まず最初に感じた
どんどん新しい取り組みや新しい機能を入れようと前を向いていて、それなら私は全力で今いるユーザーのためになることをしようと。
私はユーザーと向き合うことが好きなので、今いるユーザーを大切にしたいですし、離脱させたくない。前を向くことに特化した人たちがいるのであれば、私たちはそれを守ることに特化しようかなと意識しています。
大塚
CSという観点からすると、守っていくというのはどのようなイメージでしょうか。
塩坪
例えば、手厚い返信内容もそうですし、運営もそうです。きちんとルールを定めたり、ルール違反の人にはしっかりと警告をしていくなどです。
前に行くことや新しい事は私も好きですが、ユーザーを置いてけぼりにさせないように、チームのバランスを取りたいです。今いる人たちを離脱させないのはもちろんですが、さらに良く使ってもらえるように、ユーザーに寄り添いたいという気持ちがあります。
大塚
丸山さんはいかがでしょうか?
丸山
私の方は実務から少し離れて、自分のプロダクトのCS体制を俯瞰して見る立場になりました。ただし、まだ体制の地盤は固まっておらず、やっと部下の1人が独り立ちをした状態です。
私は一人が好きなのですが、人が増えていく中でどのように回していくかは課題ではあります。私自身、今まではエンジニアやPMとフランクにやり取りをしてきましたが、後輩達が同じように出来ているかというとそうではないです。
遠慮しているのか、私を通して発言するという事が多い状態です。今後は新しい人が入って来た時に「委縮しないでガツガツ言って大丈夫だよ」という事を伝えて、コミュニケーションの取りやすい環境に変えていきたいです。
ユーザーに対しては塩坪が話をしている通り、もっと距離が近くなると良いなと思います。コミティア(オリジナル作品の即売会)のイベントでは、ユーザーが入稿してくれたデータからグッズを制作して展示する企画を行なった際に、実際に作ってくれているユーザーと話をする事が出来ました。
そのような話をする時に「こういうことが出来てほしい」という要望を直接お聞きすることが出来るので、お問い合わせで頂くよりも伝わりやすいですよね。ユーザーからしても画面を見て、お問い合わせをして、返事を待って、となると少し面倒臭いと思います。
そのようなストレスをもっと減らせるように、もっとユーザーと会える状況・会いに行ける状況を作りたいです。会社の企画やイベントにCSの人たちがもっと出られるようにしていきたいと思います。
大塚
最後に渡部さんはいかがでしょうか。
渡部
今までCSとしてお問い合わせして頂いた問題点の改善はやって当たり前だと思っていて、次のステップとしてCS自らが売上を生み出すという事を、今後やっていきたいと思っています。
今、実際に進めているのが「BOOTH」の特集運営です。ひとつのテーマを決めて、それに関連した商品をひとつの特集ページに集め、公開をしています。
多くの作家さんの商品が、他のユーザーの目に触れられる機会を増やしてあげたい、というのとユーザーにとっても、今まで知らなかった素敵な商品との出会いのきっかけになれれば、と思いながら運営をしています。
ここでの商品との出会いが、結果的に売上へつながります。
今年もどんどんやっていきたいなと思っています。
大塚
皆さんアグレッシブな目標を持っていらっしゃいますね。本日はありがとうございました。
まとめ
ピクシブではユーザーへの取り組みの1つとして、ヘルプへの分かりやすい導線を作ることでお問い合わせを減らしたり、エンジニアとのコミュニケーションを自ら取りやすくするなどユーザーに価値を届けるために積極的に動かれている印象を受けました。
チーム内外含めての飲食スペースでの改善提案や、エンジニアからお問い合わせについての発言など、お互いに発言ができるコミュニケーション環境が整っているように感じました。また、グッズの入荷や遅延の問題を解決したり、電話でのコミュニケーションを取りながらも締め切りが近いときには柔軟な対応をしたりなどユーザーに寄り添った対応を意識されているとも感じました。
「ユーザーにとって良いサービスにしたい」
お話の中にも出ていた全員の共通の想いがあるからこそ、ユーザーに寄り添った、ユーザー中心の対応を可能にしているのではないかなと思います。
■大塚 真吾
プロサッカークラブのマネジメント職を経験後、ダイレクトマーケティング支援の株式会社ファインドスターに入社。サブスクリプション型の通販のマーケティングを100社以上支援。2013年、スタークス株式会社に入社し、2016年取締役に就任。現在、クラウド型の物流プラットフォーム「クラウドロジ」とLINE@に特化したCSツール「CScloud」を提供。
またCSJournalの編集長として、さまざまなCS実践者にインタビューを実施中。
■藤本 大輔
1982年 福岡生まれ。テレマーケティング会社で電話営業を経験の後、コンタクトセンター運営会社に移り約10年間大手インターネットサービスプロバイダのコールセンターマネジメントに従事。その後、大手ソーシャルゲーム会社のCSを経て、フリマアプリ運営会社のCSグループマネージャーとしてチャットサポートの導入やCSイベントの開催を主導。現在はコードキャンプ株式会社のCSチームを率いる。本業の他に日本で唯一の「カスタマーサポート エバンジェリスト」として、コンサルタントやCSイベントの企画などで活動中。キャッチコピーは“CSに狂っている男”。