こんにちは、CSジャーナル編集長の大塚です。
今回のCS実践者インタビューはNTTレゾナント株式会社の町田さん。前編ではチャットサポートに向いているサービスや向いていないサービスを知り、見極めた上で始めることが大切ということを教えて頂きました。
チャットを導入するとお問い合わせが増えてしまうという懸念も、お問い合わせをコントロール出来るため、最初に間口を広げなければ無理なく始められることも分かりました。
チャットの応対満足度も88%と高く、電話やメールのデメリットを補えるなど、導入による多くのメリットがあるようです。
後編ではチャットが長引いてしまうときの対処法として、メールへの切り替え対応やチャットでは定型文を使わない理由。チャット導入を検討している方へ伝えたいこと。チャットが担う重要な役割などをお話しして頂きました。
町田孝一郎平成29年にNTTレゾナントに入社。
メディア事業部ソーシャルサービス部門CS担当に配属となり、gooにおけるお客さまの満足度向上を目的としたサポート業務やソーシャルメディアの運営業務を担当。
チャットが長引いてしまう時の対処法
大塚
窓口を止めることが出来るのはチャットをする上でのポイントですね。チャットで何か良かった取り組みなどはありますか。
町田
現在は応対を開始して5分で長くなりそうかを見極めて、長くなりそうであればメールに切り替える対応をしていますね。
これはお客様にとって満足されるかどうかは微妙なラインではありますが、長くなりそうだと感じたら「一度調査をします」と伝えてメールに切り替えるようにしています。その方がチャットで何時間もお客様を拘束してやり取りをするよりもお互いにスムーズになります。
大塚
メールへの切り替えに対して、お客様は納得されるのでしょうか。
町田
言い方次第ですね。そのまま「調査しますのでお待ちください」と伝えると疑問を持たれてしまう方もいらっしゃいます。そのため「今の状況」と「これから何をしたいのか」をしっかりと伝えた上で「答えが出たらすぐにお知らせします」とご案内をした上でご理解を頂くようにしています。
大塚
そうなるとメールアドレスは、どこで取得をされているのでしょうか。
町田
最初のチャットをするために、メールアドレスの入力が必須になっています。
大塚
チャットの出し分けをコントロールされているお話と、チャネルを追加しながらメール対応もしているということですね。他に対応のコツは何かありますか。
町田
お客様をお待たせしないということは、かなり意識をしています。例えば、こちらが何かを入力している最中は「入力中」と相手に表示をさせています。
あとはお客様に伝えられる文章です。
一時期は回答を書いてから、まとめて送っていました。しかしそれではチャットの特性を活かせていないということで、なるべく細かく文章を切って送るなど工夫をしました。
会話を意識してお客様に返信する点は、試行錯誤しながら現在の形になっています。
大塚
入力や文面の出し方などの教育に関してはいかがでしたか。
町田
メールメインではありますが、オペーレーターは電話のサポートもしています。そのため「会話をするつもりで」と伝えることで比較的簡単に落とし込みは出来ました。
大塚
メールと電話の両方があるのですね。
町田
現在は、全員がメールと電話とチャットをやっております。そのため、それぞれのオペレーターがその都度、適切な話し方や切り方。定型文を使いながら会話をしている状況になります。
チャット導入を検討している方へ伝えたいこと
大塚
3つのチャネルがあると、習得度の度合いが難しいという懸念や混乱などがあるのではないかと感じました。その部分のマネジメントについてはいかがでしょうか。
町田
オペレーターのスキルにもよりますが、基本的にはメールで回答方針を覚え、電話で話し方のコツをつかみ、チャットでメール・電話のスキルを活かす、という流れで着台していくため、混乱は少ないと思いますね。
そもそも電話とメールでは全く違います。メールとチャットについても、同じ定型文を使うと間違えてチャットで長い文章が送られてしまうかもしれません。
しかし現在はチャットでは定型文のみの回答を一切行わないというルールにして、チャットは手打ちをして頂くことを徹底してもらっています。
大塚
チャットでは定型回答は行わないのですね。
町田
オープニングやクロージング、回答の大枠などはありますが、お客様に最適化した回答を意識して、電話で話をするように手打ちで文章を作っています。
大塚
チャットはOracleということですが、電話やメールは別のツールになるのでしょうか。
町田
全て一括で出来るようになっています。
大塚
顧客履歴や応対履歴も一元化されているんですね。それは良いですね。
町田
一元管理が出来たのも、チャットの導入をスムーズに行えたひとつの要因ですね。
大塚
全てがバラバラだと大変ですからね。
町田
大変ですね。電話のログも全て一つのシステムに残せようにしていますので。
大塚
本日お話をして頂いたことにより、皆さんチャットを導入しやすくなるのではないかなと思いました。他にチャットで伝えておきたいことはありますか?
町田
伝えたいのは、チャットはコントロールが出来るので、コントロールをきちんとすれば負担は大きくないということですね。
大塚
チャットを負担なく出来ているのは、NTTレゾナントさんが一元管理が出来ていることも大きな要因かもしれないですね。
町田
チャットだと、どこに躓いているのかがピンポイントで分かるのは大きいですね。ヘルプページのピンポイントの課題を可視化することが出来ますので、ヘルプページを加筆したりなど。
我々CS担当と弊社のサービスの担当者がやり取りをして、ヘルプページや使い方ページを一緒に作ったり、お客様に送る文面を一緒に考えたりもしています。そのような取り組みで、そもそもお問い合わせ件数を減らすことも出来ます。
実際に、その取り組みによりお問い合わせ件数が減っているというのもあります。
私たちとしては、お問い合わせを0件にするのが最終的な目標になります。
大塚
素晴らしいですね。
町田
そこはサービスの担当とかなり詰めて、1件でも減らせる改善をしていく取り組みを毎月定例の報告会で行なっています。その効果は出てきているのかなと感じています。
あとは、夜間帯はどうしてもチャットの応答が出来ないため、AIやチャットボットが求められている部分はあるのかなと思います。あくまでもお客様に満足して頂けるようなサービスを提供する一つとして、自分たちのサポートを活用して頂ける状態を目指して作っていきたいと考えています。
チャットが担う重要な役割。そしてAIが発達してもチャット対応がなくならない理由
大塚
あくまでもサポートはサービスの一つですからね。その中でチャットが担う役割として重要な要素は何になりますか。
町田
チャットはAIやチャットボットが出来たとしても、人間味のある対応や人として対応が求められると思います。そこで即時性のある対応となるとチャットは重要なポイントになるのかなと思います。
だからこそチャット対応は無くせない、今後も継続していくべきなのかなと思います。
大塚
人間味があるというのは大切な部分ですね。
町田
最終的には人間味が重要だというエピソードは聞くので、私たちも大切にしたい部分になります。
大塚
お客様に寄り添うという意味でもチャットは重要ということですね。最後にチャットを導入して良かったというエピソードがあれば是非教えて頂けませんか。
町田
家族の方が亡くなられて、そのブログの内容を早く確認したいとお問い合わせを頂いたことがありました。メールだと早くても数時間、通常だと24時間以上かかってしまい希望に添えないこともあります。
チャットを導入していたことで、かなりスムーズに対応を進めることでお客様に感謝を頂いたこともありました。スピーディーに対応が可能なので、「早く対応をして頂けた」と感謝を伝えて頂けたお客様は多くいらっしゃいます。
それはオペレーターのモチベーションアップにも繋がっていますし、我々としてもチャットを導入していて良かったと思える大きなポイントでもありますね。
大塚
早く解決できる、対応をして頂けるというのは困っているからこそ嬉しいですからね。本日は素敵なお話ありがとうございました。
まとめ
チャットサポートは場所や時間などの他に、状況に合わせてチャットサポートを閉じるなど臨機応変な対応とコントロールが可能だということが分かりました。
また、コントロールすることで導入のハードルは大きく下げることが出来ます。窓口を開けっ放しにするのではなく、小さなテストから窓口を広げることで無理なくスタートが切れることも分かりました。
NTTレゾナントさんはチャットを導入することで、メールでは24時間かかっていた対応が15分で完了し、お客様への応対満足度が88%になるなど大きな成果も残されています。今回町田さんにお話をして頂いたことで、チャットの印象が大きく変わり、参考位なる点が沢山ありました。今回のインタビューがチャットサポートを検討している企業や担当者様の後押しになれればうれしく思います。
■大塚 真吾
プロサッカークラブのマネジメント職を経験後、ダイレクトマーケティング支援の株式会社ファインドスターに入社。サブスクリプション型の通販のマーケティングを100社以上支援。2013年、スタークス株式会社に入社し、2016年取締役に就任。現在、クラウド型の物流プラットフォーム「クラウドロジ」とLINE@に特化したCSツール「CScloud」を提供。